日本人の宗教性に対する再考察が必要な時代

著者の田中氏は日本を代表する美術史の専門家。

学生時代にマルクス主義を体験後、ヨーロッパで西洋美術の研究を経て日本史の新たな境地を切り開く活動を進めている。

西洋的な視点では「日本人は無宗教で無神論者」が通説になっている。

ややもすると我々日本人自体も自虐史観的な傾向で納得してしまいがちだが、氏の論点はその論点を再考させてくれる力を持つ。

「神が自然を造った」一神教的世界観の西洋哲学と「自然の中から神が生み出された」日本人の宗教観の対比の中で、我々日本人がどうしても一神教的な観念を受け入れられない理由が見えてくる。

西洋哲学と一神教的世界観に潜む矛盾性が時代を経て露わとなり、西洋世界の三大宗教は最終的に無神論的世界観を生み出さざるを得なくなるまで追い詰められた。

崩壊の危機にある文明精神を再構築するために続けられている人々の努力に日本人の宗教精神とその方向性がソリューションを提供できる時代を迎えている。

そのような時代的要請の中で、我々日本人自体も世界を説得できるだけの実力を持つことが求められている。

同氏が自身の学問研究の中で切り開いてきたように、西洋的な思考方法と流儀を学ぶ必要性を忘れてはならないだろう。

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