悔いなき人生を求める人間の本心

入川保則、余命3カ月の歌手デビュー/芸能・社会/デイリースポーツonline

入川保則、余命3カ月の歌手デビュー
 中村泰士氏(右)から歌唱指導を受ける入川保則(左)=大阪府内のスタジオ

今年1月にがんで余命半年と宣告されながら、延命治療を拒否したことを公表した俳優・入川保則(71)が10日にシングル「脇役」で歌手デビューすることが5日までに分かった。30年来の友人で作曲家の中村泰士氏(72)が去りゆく友への思いを込めて、“名脇役人生”に捧げる楽曲を書き下ろした。入川も「生きてるうちにやれることはやっとかないと」と歌声を残すことを決意。5月31日に最初で最後のレコーディングを行った。

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きっかけは今年3月の余命半年宣言だった。昨年7月に直腸がんが見つかったがすでに全身に転移しており、延命治療を拒否した入川は、1月の再検査で医師から「(余命は)8月いっぱい」と宣告を受けたと公表した。

直後、報道を目にした中村氏から約20年ぶりに電話連絡が入った。中村氏は歌手・佐川満男(71)を含めた3人で80年代に「いまだに少年隊」という歌謡ショーを開催するなどしていた30年来の友人。入川は驚く中村氏に軽い調子で対応していたが、冥土の土産に曲を作る、という友人の申し出を断るすべはなかった。「歌ってみないか」という提案を「生きてるうちにやれることはやっとかないと」と引き受けた。

中村氏が作詞、作曲した「脇役」は入川の役者魂を描いた1曲。「幕が下りれば芝居は終わる わが夢芝居 悔いはない」という歌詞に、潔く人生を終えようとしている友人への敬意を込めた。作曲家としてレコード大賞を2度受賞しているヒットメーカーからの“最後の贈り物”に入川も「香典がわりにいい歌を作ってもらいました」と喜んだ。

レコーディングは5月31日に大阪のスタジオで行った。実は「まともに歌ったのは小学唱歌以来」というほど歌が苦手。しかも人生初のレコーディングとあって当日は苦戦したが、最初で最後の歌声は中村氏から「普通の歌手には絶対に出せない突き抜けた域に達した味わいがある」と絶賛されたという。

医師から宣告された余命はあと3カ月。芸歴55年、ドラマや舞台の名脇役として役者人生を全うする入川の人生を集約したような楽曲を書き下ろした中村氏は「歌を作ってあげられたのが単純にうれしかった。あらためて音楽がこんなに役に立つんだと感じましたね」と感無量の様子だった。

「脇役」は10日から「音楽工房 泰士」で配信される。

(2011年6月6日)

 


私自身がやりたいと思っていることを先駆けされている姿に素晴らしいの一言。
悔いなき人生を送りたいのは万民共通の本心の発露ですね。